鳥取市内の牧場を拠点に、こども園やプレーパーク、ポニークラブの運営から不登校支援、企業研修まで、多世代の学び、交流の場をつくり続けるNPO法人「ハーモニィカレッジ」。
大阪で暮らしていた当時、「この人と一緒に働きたい」と思える先代・石井博史との出会いが大きな転機でした。それまで鳥取はどんなところかあまり詳しく知りませんでしたが、一緒に仕事がしたい思いで鳥取に行くことを決めました。「人」との関係が一番大事ですね。鳥取に来てからは、地域柄人と人とのつながりが密なので、安心して子どもを預けたりできる人との関係性がいいところだと感じています。
先代が立ち上げた不登校支援の寄宿塾に合流しました。自然豊かな環境で馬と共に暮らしながら共同生活を行う取り組みです。そこには、夢もなく希望を失っていた子どもたちが、馬と共に生活しながらやりたいことを自分で見つけ、自分で責任を持って選んだその先の進路に進む姿がありました。
「あなたはどうしたい?」という問いかけを大切にしてきました。やるべきことが既に決められている社会は、子どもが自分でどうしたいか考えることを必要としないので、考える機会が奪われている状況。「自分で選ぶ」経験こそが、人生を前に進める力になると感じています。
自分のやりたいことを見つけ、次の道へ進んでいきます。やりたいことのために必要だと考えた結果、高校や大学へ進学する人も多いです。今では、社会人となり活躍している卒業生も多くいます。
学生ボランティアは約60人在籍しており、毎週末にはそのうち約3分の1が活動に参加しています。子どもたちのサポートだけでなく、事業運営や企画にも関わっています。一人ではできないことをチームでやること、失敗を次に生かすこと。その経験が、社会に出たときに評価されていると聞きます。若者が地域に関わり、やがてまちの担い手になっていく循環をつくりたいと考えています。
ボランティアを行う学生たち
不登校支援から始まり、現在は、
・こども園の運営
・プレーパークの開催
・乳幼児と親の居場所づくり
なども行っています。不登校支援に関わる中で、「生きていても意味がない」と話す若者との出会いが衝撃的で、そうした子どもたちの力になりたい気持ちが原動力になっています。そして、そもそも生きづらさを抱えずに済む環境をつくりたいと感じ、幼児期の体験の場や、乳幼児と母親の居場所作りにも活動を広げてきました。
――最近は「仕事」や「お金」をテーマにしたセミナーを開催していますね。一見、牧場とは遠い分野だと感じますが、どんな背景で開催したのですか。
目的があり、それを達成する手段にお金があると思います。しかし、手段であるお金が目的になり苦しむケースも目にしてきました。そこで、卒業生やボランティアの学生、スタッフ、自分自身が学び直しする機会を作りたいと思っていました。そんな時、卒業生を通じて、働くことやお金のリアルに詳しい方に授業をしてもらえることに。今年11月には学生向けと社会人向けの講座を開き、約40人が参加しました。番長投資不動産の永山一盛社長、ファイナンシャルアドバイザーの植木芳延さんに教えてもらいました。
学生には、社会に出る前に知っておくべきことや、就職先の選び方を教えてもらいました。社会人には、お金とキャリアを見つめ直すきっかけとなるような授業をしてもらいました。
ハーモニィカレッジの理念は「100年を生き抜く底力を育む」です。どんな時代になっても、自分らしく生きていける力を子どもたちに育んでいきたい。そのためにできることを、これからも続けていきたいと思っています。今後はより活動の輪を広げ、障害など、さまざまな特徴を持つ子どもたちや家庭の支援になるような事業にも取り組みたいです。
